私自身、初のエラリー・クイーン作品。
先般、有栖川有栖氏の『月光ゲーム』を読んでいたら、ミステリーの古典・名作への引用が多々あり。
すっかり興味をそそられ、矢も盾もたまらず...とばかりに名作と名高い『Yの悲劇』を読みたい!
と、その前に、ここはきちんと順番通り。ということで。
初エラリー・クイーンは、ドルリー・レーンシリーズ第一作目の『Xの悲劇』です。
他のミステリー作品よりも時間をかけて拝読し、すっかり堪能させていただいた本作。
じっくりと味わわせていただきました。
読み始めはさすがに、すっとは頭に入ってこない部分がそれなりにあり...
1930年代の米国の情景描写や登場人物の身なり・特徴。
事件にまつわる細かい描写。
特に、シェークスピア色の濃いドルリー・レーンまわりの描写は、本書の記載と脳内イメージをつなげるのに多少の時間が必要でした。
が。
ページが進むにつれ、グイグイ引き込まれる。
中盤に来ると、一言一句、逃せなくなる。
いつの間にやら、事件関連の描写や謎解きにつながりそうな些細なことでもメモを取る。
などなど...すっかり物語に引き込まれ。
そして、謎が一気に、なおかつ、理路整然と解きほぐされていく最終章。
関連する描写・記載を、ページをめくりめくって確認しながらの、謎解きへののめり込み。
エラリー・クイーン作品にすっかり魅了された自分がそこにいました...
ミステリー作品へのスタンスや読み方をすっかり変えてくれた本作。
次作の『Yの悲劇』。
とてもとても楽しみです。
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Xの悲劇 (角川文庫) 文庫 – 2009/1/24
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ドルリー・レーン氏初登場! ミステリの古典が新訳で生まれ変わる。
結婚披露を終えたばかりの株式仲買人が満員電車の中で死亡。ポケットにはニコチンの塗られた無数の針が刺さったコルク玉が入っていた。元シェイクスピア俳優の名探偵レーンが事件に挑む。決定版新訳!
結婚披露を終えたばかりの株式仲買人が満員電車の中で死亡。ポケットにはニコチンの塗られた無数の針が刺さったコルク玉が入っていた。元シェイクスピア俳優の名探偵レーンが事件に挑む。決定版新訳!
- 本の長さ448ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2009/1/24
- ISBN-104042507158
- ISBN-13978-4042507154
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商品の説明
著者について
●エラリー・クイーン:フレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リーのいとこ同士のユニットのペンネーム。クイーン名義の処女作『ローマ帽子の謎』以来本格探偵小説の旗手として多くの作品を発表した。
登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2009/1/24)
- 発売日 : 2009/1/24
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 448ページ
- ISBN-10 : 4042507158
- ISBN-13 : 978-4042507154
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- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2024年6月3日に日本でレビュー済み
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Xの悲劇、Yの悲劇、Zの悲劇は,エラリークイーンの代表作として,ずっと心に残っていました。久しぶりに,Zの悲劇を読んだのをきっかけとしてXの悲劇も読んで見ました。思っていたほど,すっきりとした推理とは言えませんでしたが,推理小説の金字塔として,もう一度読んで観る価値はありました。
2024年4月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
従兄に進められて購入しました。
訳文も読みやすく、サクサクと読み進めました。
解説者も有栖川有栖氏で、エラリー・クイーンへの愛が溢れていて、好感がもてました。
物語は面白かったのです。芝居を観るのが好きなので、引退したハムレット役者という設定も楽しめました。ただ、第一の殺人で探偵が犯人を予想しているなら、警察へもっと早く忠告していれば…と思いました。論理的に犯人を指摘するには証拠が全て揃わないとダメなのも分かっているのですが。
訳文も読みやすく、サクサクと読み進めました。
解説者も有栖川有栖氏で、エラリー・クイーンへの愛が溢れていて、好感がもてました。
物語は面白かったのです。芝居を観るのが好きなので、引退したハムレット役者という設定も楽しめました。ただ、第一の殺人で探偵が犯人を予想しているなら、警察へもっと早く忠告していれば…と思いました。論理的に犯人を指摘するには証拠が全て揃わないとダメなのも分かっているのですが。
2016年5月18日に日本でレビュー済み
聴覚を失った元俳優:ドルリー・レーン氏が探偵となるミステリーです。状況証拠と物的証拠で論理的に犯人を探し当てるレーン探偵、カッコイイです。「聴覚が無い」=「探偵だけに聞こえた〇〇の音から犯人を推測~等、『探偵役のみが気付いた手掛かり』が無い」ということ。字面上の情報のみで論理的推理を元に、読者なら誰でも犯人を見つけられるハズですが…私には不可能でした。
レーン氏の謎解きを読むと、第一の犯行でホシの目星は付くそうです。言われてみればその通りですが、言われて初めて合点する人は探偵には向きませんね。
レーン氏の謎解きを読むと、第一の犯行でホシの目星は付くそうです。言われてみればその通りですが、言われて初めて合点する人は探偵には向きませんね。
2021年11月6日に日本でレビュー済み
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第二の殺人が起きた時点で、これは「顔のない屍体」だと気付き、犯人を特定できる。
それからは正直読み進めることが苦痛であった。伏線でもない情報、平坦な文章、やたらと多い場面転換、すべてが過多であり、極めて物語に無駄が多い。
あとは動機につながるバックグラウンドだけなのだから、もっとすっきりまとめてくれよと、イライラが募る。
もう一つ不満点を挙げるとすれば、天才である探偵、つまり役割としては、物語内で思考論理の語られることのない人物と、凡人である、司法側の、実際に行動をしていく人物たちとの隔たりの大きさだ。それは能力と物語の両面からである。
能力的に差がありすぎて、司法側の「アホさ」にうんざりする。
また物語的にも、探偵とその他の登場人物との感情の交流が少なく、小説に魅力を与えることができていない。
小説内では設定が簡単に別人になれる世界となっており、どうやら読者はそれを承諾しなくてはならないらしく、異物の混じったものを無理矢理口に突っ込まれているようでやや不快であった。
三つの事件もそれぞれ偶然性に委ねる部分が大きく、一言で言ってしまえば、トリック的に、弱い。
それからは正直読み進めることが苦痛であった。伏線でもない情報、平坦な文章、やたらと多い場面転換、すべてが過多であり、極めて物語に無駄が多い。
あとは動機につながるバックグラウンドだけなのだから、もっとすっきりまとめてくれよと、イライラが募る。
もう一つ不満点を挙げるとすれば、天才である探偵、つまり役割としては、物語内で思考論理の語られることのない人物と、凡人である、司法側の、実際に行動をしていく人物たちとの隔たりの大きさだ。それは能力と物語の両面からである。
能力的に差がありすぎて、司法側の「アホさ」にうんざりする。
また物語的にも、探偵とその他の登場人物との感情の交流が少なく、小説に魅力を与えることができていない。
小説内では設定が簡単に別人になれる世界となっており、どうやら読者はそれを承諾しなくてはならないらしく、異物の混じったものを無理矢理口に突っ込まれているようでやや不快であった。
三つの事件もそれぞれ偶然性に委ねる部分が大きく、一言で言ってしまえば、トリック的に、弱い。
2010年12月23日に日本でレビュー済み
この作品を初めて読んだのは、高校の図書館であった。
読み進めて終盤まで進んだとき、手書きのト書きがベージに片隅にあった。
「犯人は×××」・・・・・笑った。困った人もいた。
それでも、この作品は面白かった。クイーンの国名シリーズ、四大悲劇の魅力は、推理の面白さにある。『エジプト十字架の秘密」を例に出すと、今風にいえばサイコキラーの犯行?、さもなければ妄想に取り付かれたとしか思えない連続首切り事件。卓越した推理力をもったエラリーですら、「この事件に大団円はないのではないか?」といい出す始末。が、最後に至って犯人は決定的なミスをやらかし、エラリーはそこから見事な推理を展開して真相を明らかにする。『エジプト十字架の秘密」とえいば、犯人が仕掛けるトリックより、エラリーが展開する推理の足がかりになった「手がかり」が話題になる。ようするに、クイーンの魅力は犯人仕掛けるトリックもさることながら、探偵エラリーがどんな意外性に満ちた推理を展開するかが、作者のみそなんで、推理展開がわからないで犯人だけわかってもあまり意味がない。ト書きの嫌がらせをした人は、はっきり言って物が分かっていない、たしかに犯人が分からないほうが、いいに決まっているが、ことクイーンの諸作は、それだけでは嫌がらせになっていないのだ。
この作品の手がかりの巧妙さと探偵レーンの推理の意外性はすごい。傑作、佳作ぞろいの国名シリーズ、四大悲劇のなかでも、ずば抜けている。名作と名高い「Yの悲劇」よりロジックの面白さという点では、「Xの悲劇」のほうがすばらしい。テーマ的にもクイーンらしい趣向が盛りだくさん。電車、船といったニューヨークの交通機関が事件の舞台になっていてストーリもダイナミックで読ませる。なにより、当時のニューヨークの息吹が感じられて読み物と素直に面白い。読んで「ああ、おもしろかった」という点でも「Yの悲劇」より上だろう。
ただ、犯人のトリックに無理が感じられる点、レーンのキャラはすばらいいが、ルパンのような変装ができる点はいかがなものか??そうしてた点が引っかかって全体的にみると「Yの悲劇」の方に軍配があがってしまう。とはいえ、これはあくまで好み。どちらも、ミステリ史にのこる傑作であることに変わりはない。読んで損はない。
クイーンは演出効果が優れた作家であるが、この作品も例外でない。ストーリ展開がはでで飽きさせない。中盤の法廷シーンを持ってくるあたりも上手い。プロット作りが半端でなく巧みなのである。さらに終幕にいたり、ついにレーンが犯人を指摘するシーンは名シーンだ。これに匹敵するのはカーの「三つの棺」でフェル博士が犯人を指摘するシーン位しか思いつかない。本当に演出が巧い。さらに物語の締めくくる最後の一行の巧みさ。これをなんといったらいいのか?クイーンはこうした小説作りの上手さでもすばらしい。まさに天才である。
読み進めて終盤まで進んだとき、手書きのト書きがベージに片隅にあった。
「犯人は×××」・・・・・笑った。困った人もいた。
それでも、この作品は面白かった。クイーンの国名シリーズ、四大悲劇の魅力は、推理の面白さにある。『エジプト十字架の秘密」を例に出すと、今風にいえばサイコキラーの犯行?、さもなければ妄想に取り付かれたとしか思えない連続首切り事件。卓越した推理力をもったエラリーですら、「この事件に大団円はないのではないか?」といい出す始末。が、最後に至って犯人は決定的なミスをやらかし、エラリーはそこから見事な推理を展開して真相を明らかにする。『エジプト十字架の秘密」とえいば、犯人が仕掛けるトリックより、エラリーが展開する推理の足がかりになった「手がかり」が話題になる。ようするに、クイーンの魅力は犯人仕掛けるトリックもさることながら、探偵エラリーがどんな意外性に満ちた推理を展開するかが、作者のみそなんで、推理展開がわからないで犯人だけわかってもあまり意味がない。ト書きの嫌がらせをした人は、はっきり言って物が分かっていない、たしかに犯人が分からないほうが、いいに決まっているが、ことクイーンの諸作は、それだけでは嫌がらせになっていないのだ。
この作品の手がかりの巧妙さと探偵レーンの推理の意外性はすごい。傑作、佳作ぞろいの国名シリーズ、四大悲劇のなかでも、ずば抜けている。名作と名高い「Yの悲劇」よりロジックの面白さという点では、「Xの悲劇」のほうがすばらしい。テーマ的にもクイーンらしい趣向が盛りだくさん。電車、船といったニューヨークの交通機関が事件の舞台になっていてストーリもダイナミックで読ませる。なにより、当時のニューヨークの息吹が感じられて読み物と素直に面白い。読んで「ああ、おもしろかった」という点でも「Yの悲劇」より上だろう。
ただ、犯人のトリックに無理が感じられる点、レーンのキャラはすばらいいが、ルパンのような変装ができる点はいかがなものか??そうしてた点が引っかかって全体的にみると「Yの悲劇」の方に軍配があがってしまう。とはいえ、これはあくまで好み。どちらも、ミステリ史にのこる傑作であることに変わりはない。読んで損はない。
クイーンは演出効果が優れた作家であるが、この作品も例外でない。ストーリ展開がはでで飽きさせない。中盤の法廷シーンを持ってくるあたりも上手い。プロット作りが半端でなく巧みなのである。さらに終幕にいたり、ついにレーンが犯人を指摘するシーンは名シーンだ。これに匹敵するのはカーの「三つの棺」でフェル博士が犯人を指摘するシーン位しか思いつかない。本当に演出が巧い。さらに物語の締めくくる最後の一行の巧みさ。これをなんといったらいいのか?クイーンはこうした小説作りの上手さでもすばらしい。まさに天才である。
2023年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
海外ミステリ作品の名作、なんとかネタバレ踏まずに読めた。シェイクスピアの蘊蓄は正直よくわからず途中しんどかったけど、解決編は一気に読破。
探偵レーンの強烈なキャラ、伏線の散布、動機の悲劇性、論理の美しさは「これが名作かぁ」の一言。…染みるわ。
探偵レーンの強烈なキャラ、伏線の散布、動機の悲劇性、論理の美しさは「これが名作かぁ」の一言。…染みるわ。
2021年2月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
エラリー・クイーンは、コナンドイルやアガサクリスティと肩を並べる推理小説家として知られる。しかし、ドルリー・レーンの探偵シリーズが、ホームズやポワロのように読まれていない理由も読んで理解できた。
ドルリー・レーンシリーズを読んだのは最近だが、もっと早くに読んでおけばよかったという後悔はない。推理小説ジャンルの資料の一つとして読んで差支えはない。
この作品の長所であるが、名俳優による素人探偵の活躍という奇抜なアイデア、シェイクスピアの世界観を取り入れいてる点、登場人物たちのキャラ立ち、描写力などは今もって一級品である。当時の観点からすれば、星4つの高い評価だったのであろう。しかし、作品はどうしても現在からの評価をつけざるをえない。逆に、現在の観点からも高い評価が得られる作品こそ不朽の名作である。
当時の推理小説は一般的に、推理に力を入れて、犯人の動機に力をいれていない。おまけ程度の扱いである。Xの悲劇は、犯人の動機が世界一級品であり、日本の作家が真似をできない設定をしている。現代のハリウッド映画にあってもおかしくないほどのスケールがある。にもかかわらず、最後の方で、さらり触れられる程度で、活かしきれていない。そのために、期待は裏切られ、退屈してしまう。ドルリー・レーンの長々として推理を聞くよりも、犯人側からの視点でもっと多くのページを割いて、犯人の心情と怨念を鮮明に描ければ、不朽の名作になったのではないかと思える。
現代の作家が、大胆にリライトすればかなり面白いものができるのではないかと思える。この点が極めて残念であり、本書の作品を退屈にさせている点でもあるので、星2つ減としたい。
以下の点は、本作の短所である。ネタバレがあるので、未読の方は気を付けていただきたい。
・一つ目の殺人の凶器は、針に少し触れるだけで死に至る。この凶器を胸ポケットにいれていつも持ち運ぶのは不可能である。しかも、車掌がどうやってロングストリートのポケットに忍ばせることができたのか不明で、忍ばせる瞬間も電車は揺れるので犯人にとっても危険である。
・第二の殺人はすり替え殺人だが、無論現在では不可能な手口である。しかし、当時であってもかなり身元洗いが杜撰である。体格をまったく似せるというのは難しい。それに、殺されたクロケットはかなりの資産を有しているはずであり、行方不明となれば大騒ぎとなり、たとえカナダに住んでいようともアメリカに伝わったのではなかろうか(そのため、カナダ在住で秘密裏に大金が送金されたという設定なのだが)。クロケットは株式会社の売り上げの3分の1が手に入るのだから、豪邸に住み、妻(もしくは愛人)や大勢の召し使いを雇っていたはずである。大勢の関係者が忽然と姿を消して戻ってこない主の消息を求めないのはありえないであろう。
・犯人が全て犯行を成し遂げた後に、車掌勤務していたのはなぜか。そもそも、5年前から練りに練っていた殺人である。復讐を果たし終えた後も通常通り車掌勤務をするとは考えられない。
・犯人と生き別れになった娘との関係が全く描かれていない。犯人は犯行の前後、必ず娘が気になるはずである。娘との関係(殺された妻との関係)も描かれていないため、犯人の人物像に深みがなくなる。
・素人探偵ものでは仕方ないことだが、警察や検事から公権力が与えられている点。現在では、個人情報保護や権限の明確化から、臨時に役職が与えられない限り、個人情報も捜査の権限も与えられない。当時からしても、ドルリー・レーンは、単独で行動し、相手に証明書を見せず、検事から依頼されているんだといって情報を聞き出す。ドルリー・レーンが正義の側であるからこそ、許されるが、悪用する側なら考えものである。
・ドルリー・レーンは名俳優である。名俳優は演劇の稽古で毎日が大変である。それにもかかわらず、いつ、どこで、なぜ、警察も及ばない超人的な捜査能力と技術を身につけたのかが不明で、この謎は最後まで解けなかった。どこかの書で書かれているかもしれないが、これだけの長編ならば、1ページ分ぐらい書いてもよかったはずである(著者のあらゆる本を読まなければ理解できないという設定は一般読者を無視した身勝手なものである)。それゆえ、ドルリー・レーンの犯罪への姿勢が伝わってこない。
以上の点は、小説であり、独創性を生かすためにやむをえない点もある。しかし、次の点は致命的である。3つ目の殺人におけるダイイング・メッセージは本書のタイトルであり、肝の部分である。最後の方に登場して、しかも最後の落ちが車掌の切符切りのマークでは、がっかりする。なぜ、The Tragedy of Xなのか、疑問が解けない。Xは犯人に深く関係していないといけない。もし、この切符切りがFならどうするのか?切符切りを交換することだってありえるはずである。犯人がウルグアイにいた時からの因縁があればよかったであろう。これは本書の最大の欠点であり、星1つ減とせざるをえない。
本書が推理小説の古典であることに異論はない。ただし、面白さ、感動といった点では、やはり古びてしまっている。当時の一級作品でさえ、90年も経てば古びてしまう。ある意味、現在でも読まれるというのは、本物としての価値があると思う。現代から見て星2つというのは決して悪い評価ではない。日本の現代小説で、90年も経って本書より高い評価を得られるかははなはだ疑問である。
ドルリー・レーンシリーズを読んだのは最近だが、もっと早くに読んでおけばよかったという後悔はない。推理小説ジャンルの資料の一つとして読んで差支えはない。
この作品の長所であるが、名俳優による素人探偵の活躍という奇抜なアイデア、シェイクスピアの世界観を取り入れいてる点、登場人物たちのキャラ立ち、描写力などは今もって一級品である。当時の観点からすれば、星4つの高い評価だったのであろう。しかし、作品はどうしても現在からの評価をつけざるをえない。逆に、現在の観点からも高い評価が得られる作品こそ不朽の名作である。
当時の推理小説は一般的に、推理に力を入れて、犯人の動機に力をいれていない。おまけ程度の扱いである。Xの悲劇は、犯人の動機が世界一級品であり、日本の作家が真似をできない設定をしている。現代のハリウッド映画にあってもおかしくないほどのスケールがある。にもかかわらず、最後の方で、さらり触れられる程度で、活かしきれていない。そのために、期待は裏切られ、退屈してしまう。ドルリー・レーンの長々として推理を聞くよりも、犯人側からの視点でもっと多くのページを割いて、犯人の心情と怨念を鮮明に描ければ、不朽の名作になったのではないかと思える。
現代の作家が、大胆にリライトすればかなり面白いものができるのではないかと思える。この点が極めて残念であり、本書の作品を退屈にさせている点でもあるので、星2つ減としたい。
以下の点は、本作の短所である。ネタバレがあるので、未読の方は気を付けていただきたい。
・一つ目の殺人の凶器は、針に少し触れるだけで死に至る。この凶器を胸ポケットにいれていつも持ち運ぶのは不可能である。しかも、車掌がどうやってロングストリートのポケットに忍ばせることができたのか不明で、忍ばせる瞬間も電車は揺れるので犯人にとっても危険である。
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・犯人が全て犯行を成し遂げた後に、車掌勤務していたのはなぜか。そもそも、5年前から練りに練っていた殺人である。復讐を果たし終えた後も通常通り車掌勤務をするとは考えられない。
・犯人と生き別れになった娘との関係が全く描かれていない。犯人は犯行の前後、必ず娘が気になるはずである。娘との関係(殺された妻との関係)も描かれていないため、犯人の人物像に深みがなくなる。
・素人探偵ものでは仕方ないことだが、警察や検事から公権力が与えられている点。現在では、個人情報保護や権限の明確化から、臨時に役職が与えられない限り、個人情報も捜査の権限も与えられない。当時からしても、ドルリー・レーンは、単独で行動し、相手に証明書を見せず、検事から依頼されているんだといって情報を聞き出す。ドルリー・レーンが正義の側であるからこそ、許されるが、悪用する側なら考えものである。
・ドルリー・レーンは名俳優である。名俳優は演劇の稽古で毎日が大変である。それにもかかわらず、いつ、どこで、なぜ、警察も及ばない超人的な捜査能力と技術を身につけたのかが不明で、この謎は最後まで解けなかった。どこかの書で書かれているかもしれないが、これだけの長編ならば、1ページ分ぐらい書いてもよかったはずである(著者のあらゆる本を読まなければ理解できないという設定は一般読者を無視した身勝手なものである)。それゆえ、ドルリー・レーンの犯罪への姿勢が伝わってこない。
以上の点は、小説であり、独創性を生かすためにやむをえない点もある。しかし、次の点は致命的である。3つ目の殺人におけるダイイング・メッセージは本書のタイトルであり、肝の部分である。最後の方に登場して、しかも最後の落ちが車掌の切符切りのマークでは、がっかりする。なぜ、The Tragedy of Xなのか、疑問が解けない。Xは犯人に深く関係していないといけない。もし、この切符切りがFならどうするのか?切符切りを交換することだってありえるはずである。犯人がウルグアイにいた時からの因縁があればよかったであろう。これは本書の最大の欠点であり、星1つ減とせざるをえない。
本書が推理小説の古典であることに異論はない。ただし、面白さ、感動といった点では、やはり古びてしまっている。当時の一級作品でさえ、90年も経てば古びてしまう。ある意味、現在でも読まれるというのは、本物としての価値があると思う。現代から見て星2つというのは決して悪い評価ではない。日本の現代小説で、90年も経って本書より高い評価を得られるかははなはだ疑問である。